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即興二次小説が終わるらしいので、投稿してたせかごの即興小説を追記にまとめておきます。
読み返すのが怖すぎるから大急ぎでコピペしてどうにかしないと………………

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じいちゃんが泣くのを見たのは二回だけ。 
ばあちゃんのお葬式が終わったその日の夜、ベッドの中で声を上げずに、ずっとずっと泣いていた。
二回目は……。

「お義父さん」
開け放したドアにもたれて母さんがイライラした調子でまくしたてる。
視界から逃げるため、じいちゃんの隣から部屋の隅っこに積み上げた洗濯物の山に飛びつき、放置したままのそいつらを一生懸命たたむふりをしながら、二人の様子を伺う。
「いい加減お義母さんの遺品を整理して、部屋を空けてくれませんか」
「……ああ」
ベッドに腰掛けたままじいちゃんがぼんやりとした相槌をして、親指で目頭を擦る。うつむいた横顔は不健康に青白くて、昔見上げた気丈で自信に溢れたじいちゃん面影はすっかり消え去っていた。
「もう少しだけ待ってくれないか、物が多いから片付けるのに時間が……」
「どうせガラクタなんだから、全部捨てるか売ればいいのに」
ガラクタという単語に、じいちゃんが弾かれたように顔を上げる。菫色の瞳が真っ直ぐに母さんを見つめ、わなわなと唇が震える。
「そんな言い方は」
「ガラクタはガラクタでしょう」
悪びれず母さんがやり返す。
夜空と同じ色をした目はささくれ立っていて、弱りきったじいちゃんを射殺そうときっと睨みつける。
「死んだ人は帰って来ないんだから、さっさと始末してくれませんか」
研ぎあげたナイフに似た正論が突きつけられ、じいちゃんはまた顔を俯けると、下唇を噛み締めてから本当に小さな声で呟いた。
「……そんな言い方をしなくても良いだろう」
「何ですか?」
母さんが一歩踏み出すのを見て、おれは洗濯物を握り締めて慌てて立ち上がる。
「母さん!」
「何」
「これ、父さんの服だよね。混ざってたんだけど」
てろてろによれたシャツを母さんの手に押し付け、笑顔を貼りつける。心底楽しくて笑ったのがいつになるのか、あんまり覚えていない。
舌打ちひとつ、母さんは乱暴におれの手からシャツを奪い取ると、ドアを閉めないまま部屋から出て行った。
あまり作業が進まなかったせいで全然片付いていない布の山を見捨てて、おれはじいちゃんの隣に腰かける。
取り繕うように手のひらでおでこを撫でると、じいちゃんは弱々しく微笑を浮かべる。
皺だらけで太い血管が何本も甲を走る手のひらも、ゆるくウェーブした猫の毛みたいに柔らかい白髪も、顔中くしゃくしゃになるのも気にせずにっこりと笑った時に浮かぶ笑窪も、おれと同じ色をした瞳も、全部全部好きなのに、それなのに母さんも父さんもじいちゃんのことが嫌いで。
どうしてこうなったんだろうと何度自分に聞いてみても、答えは返ってこない。
「少し、一人にしてくれないか?」
か細い声でじいちゃんがおれに言う。
頷いて、そっとドアを閉めようとした瞬間、じいちゃんの横顔に涙が一滴伝い落ちるのを見た。

それが、二回目に見たじいちゃんの泣く姿だった。

「あの人は?」
「一人にして欲しいって」
「ああ。また昼寝でもするつもりね」
母さんがせせら笑う。
「夢の中でなら大好きな嫁に会えるからって、一日中眠りこけてちゃこっちも迷惑なんだけど。寝てるだけならともかく、自分の食事も用意しないんだから。犬猫みたいに可愛げがあるなら世話してやってもいいけど、口答えもする老いぼれなんか家においておきたくないのよ。ああもう、さっさと」
悪口を聞き流すだけの存在になったのはいつからなのかも、おれはよく覚えていない。
耳に水が入った時みたいにぼやけた母さんの声を受け流して、おれはただ、昔そうしてたようにじいちゃんと一緒のベッドで寝たいなと思った。

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「俺が殺したかったのは父親じゃなくていつまでも逃げ続ける自分だったんだ」

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赤毛の隙間から背骨の隆起する様が覗く。色白な肌に節々が浮かびごく柔らかな影を落とす。
 目で撫で上げると筋張った肩とそこから伸びるしなやかな腕が黙々と得物を解体し、念入りに手入れをする光景に突き当たる。
 丸めた背中の向こうからカチャカチャと金属同士のぶつかる軽やかな音が聞こえ、傍らに放り出された黒く汚れた布切れを掴んでは何かを拭いまた投げ捨てる一連の流れは、もはや何の感情も籠められておらず、ぜんまい仕掛けのおもちゃのように見えた。
 視線を背に戻し、今度は地面に向かってずり下げる。力強く張った腰骨とくたびれたベルト、それからポケットを何個も付け足してやった巻きスカート…スカートというかただの便利な布…に覆われた尻くらいしか目に入らず、時々あぐらをかいた足を解いて片膝を立てたり、またあぐらに戻る長い足を眺めるのにも飽きて、俺はチェーザレに背中を向けるような体勢に戻り、その辺の草むらに横目をくれてやる。
 無言の時間が流れても苦痛ではない関係は良い友達の証拠だと言うけど、この関係は友達なのか、それとも飼い主とペットなのか、ただのギルドの仲間なのか、もっと別のそれか、はたまた名付けるのにも値しない程度の付き合いなのか考える内にだんだんと瞼が重くなってきて、気が緩んだ拍子に思わず体が傾ぎ、暴君に背中を預けるような姿勢になる。
 押し退けられる、と体を固めてみたけど、拳も暴言も飛んでこなかった。相変わらず重砲を片す雑音だけが俺達の間に流れていた。
 へたれたシャツと、薄い皮膚越しに伝わる体温と、背骨が擦れる感触にじわじわと心臓が熱くなり、鼓動が早まっていく。
 悟られないように必死に呼吸を深く静かに整えていく。ほんの少しだけ体重をかけて、金属音の合間に届くあいつの吐息に耳を澄ませて、そうして俺は夢の淵に落ちていった。



「イジィはムキムキだよね」
「うん」
「アレウスもムキムキだよね」
「そうだな」
「なんで?」
 なんで、と聞かれても。改めて考えてみても、どうしてこんな図体になったのか検討もつかない。
 肩をすくめて見せると、ハイデは納得が出来ないといった表情で頬を膨らませ、丸っこい手で私の脇腹を押してくる。釣られてイジィも指で肉をつまみ引っ張ろうとする。
 両親が丈夫な体をしていたのかもしれないし、三番目か四番目の主の元で死ぬほど肉体労働に励んだ結果なのかもしれない。
 自分の意志で鍛えようと思ったことはなかった。力仕事向きの体になると炭鉱送りになるか、運が悪いと素手で魔物と戦わされる娯楽に突き出される羽目になると知っていたから。
 剥き出しになったハイデの真っ白な腹を指で突くと、それは形容し難い確かな柔らかさを持って指を押し返してくる。マシュマロとも焼き立てのパンとも、産まれたての子犬の腹ともつかないハイデの腹部。
 己の肉体を顧みるが、宗教画に描かれた赤子そっくりなハイデの腹とは裏腹に、私の腹部は焦げたクッキーにコーヒーを浸したような色をしていたし、盛り上がった腹筋はいつか見かけたちぎって食べるパンのように見えた。
「おじさんのお腹もムキムキなのかなぁ」
 言うなり、ドアが開かれる。その先には主が仁王立ちしており、互いの腹を突きあう我々をじっと見下ろした後、仏頂面でぼやく。
「もう寝ろ」
「おじさん」
「何だ」
「お腹見せて」
「さっさと寝ろ」
 噛み合わない会話を無視してイジィがベッドの縁から腰を上げると、つかつかと主に歩み寄り、無言且つ迅速にシャツの裾を捲りあげた。


「おじさんのお腹はなんでふかふかなの?」
「黙れ、ハイデ」
「なんで!」
「ジジイになるとああなるんだよ」
「誰がジジイだ」
「ボクもおじさんくらいの歳になったらこうなるの?」
「腐った餅のような体型だとカビが生えると聞いたぞ」
「お餅じゃない!!」

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ベルナール パラ
ロドルフ ドクマグ
アンリ プリンス
ジョエル メディック
イグナシオ ゾディ

スヴャトスラフ スヴャトーシャ スラーヴァ、スベーチク レン


男しかいない…

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